アーカイブ(2014年7月)

法律のお話⑯【賃金を支払いすぎた場合】

■(事例)
会社が,従業員の残業代の計算について計算ミスをして,残業手当を支払い過ぎてしまったことが判明した場合に,支払い過ぎた残業手当を従業員の翌月の給与から差し引くことができるか。

■(本文)
労基法24条1項本文において,「賃金は,通貨で,直接労働者に,その全額を支払わなければならない。」とされており,賃金の「全額払の原則」などが規定されています。
したがって,会社は従業員に対して,給与の一部ないし全額を控除して支払うことは原則として許されていません。
もっとも,労基法24条1項ただし書きには,例外的に控除が許される場合が規定されており,法令に別段の定めがある場合や一定の要件を備えた労使協定がある場合には,給与の一部を控除して支払うことができます。
たとえば,給与所得の源泉徴収,社会保険料の控除は法令で認められており,社宅の家賃の控除などについても要件を備えた労使協定があれば認められます。
したがって,本件の場合も,要件を備えた労使協定があれば,従業員の翌月の給与から差し引くことは許されます。

では,要件を備えた労使協定がない場合は,支払い過ぎた残業手当を従業員の翌月の給与から差し引くことが一切許されないかというとそういうわけではありません。
「過払いのあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期に」「あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか,その額が多額にわたらないとか,要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合」であれば,許されることになります(最判昭和44年12月18日)。

本件の場合も,従業員に支払い過ぎの残業手当を差し引くことを予告し,その差し引く金額が多額でないのであれば,支払い過ぎた残業手当を従業員の翌月の給与から差し引くことも許されるということになります。

以上

2014年7月28日 11:03 - カテゴリー: 法律のお話し

法律のお話⑮【意思能力・行為能力】

2 意思能力・行為能力

Q 布団等の販売会社が商品を販売する際,買主は80歳で物事に対する理解力が乏しい状態で一人で自宅に居たところ,同社の販売員から示された売買契約書がどのような目的で使用されるかを十分に理解しないまま,同販売員の指示に従い,売買契約書に署名押印しました。その後同社から売買代金の支払いを請求したところ,買主は内容を理解しないまま契約を締結したから契約は無効若しくは取り消しうると述べて支払いに応じないが,同社は支払いを受けることができるでしょうか。

A できません。買主が契約時に自己の行為の結果を判断する能力すなわち意思能力に欠ける場合は契約は無効となります。また,買主が成年被後見人,被保佐人,被補助人である場合には,契約は取り消しうるものになります。

2014年7月14日 10:07 - カテゴリー: 法律のお話し

暑中お見舞い申し上げます。

 

7月3日すっきりしない札幌の空です。

 

7月3日どんよりした中標津の空です。

 

2014年7月3日 17:58 - カテゴリー: お知らせ
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