アーカイブ(2014年5月)

法律のお話⑬ 【会社が従業員の給与を支払えない場合】

■(事例)
今月中に回収予定だった売掛金が回収できず,資金繰りに困り,従業員に対する今月分の給与の支払いができないことから,給与の支払いを先延ばししようと考えているが,これは可能でしょうか。

■(本文)

労基法24条1項本文において,「賃金は,通貨で,直接労働者に,その全額を支払わなければならない。」とされており,賃金の「全額払の原則」などが規定されています。

また,労基法24条2項本文において,「賃金は,毎月1回以上,一定の期日を定めて支払わなければならない。」として,「毎月1回以上一定期日払の原則」が規定されています。
そして,その例外として,臨時に支払われる賃金,賞与の他,1カ月を超える期間についての精勤手当,勤続手当および能率手当とされている(労基法24条2項ただし書き,労基規則8条)。

これらの規定は,労働者の定期的な収入を確保し,その生活基盤の安定を確保しようとすることを目的としています。

本件の場合,労基法24条2項但し書き規定の「毎月1回以上一定期日払の原則」の例外のどれにも該当しないことから,従業員の給与の支払いを先延ばしすることは許されていません。
それにもかかわらず,従業員の給与の支払いを行わなかった場合,30万円以下の罰金に処せられることが規定されていますが(労基法120条1号),会社の経営状態などから不可抗力ともいえるような場合もあり,全ての給与の支払いの先延ばしが処罰されているというわけではありません。
                                     以上

2014年5月28日 11:44 - カテゴリー: 法律のお話し

法律相談のお話⑫【補助制度について】

【補助制度について】

■仮に,前回の「保佐制度について」のYの場合に,医師に診断書を記載してもらった際に「補助相当」とされたため,Ⅹが補助開始の審判を申し立てたとします。そして,その結果補助開始の審判が出て,補助人としてⅩが選任された場合,保佐の場合とどのように異なるでしょうか。

 

■補助は,精神上の障害により事理弁識能力が不十分な場合に認められる,法定後見制度です。保佐の場合には,「著しく」不十分である必要があり,補助は保佐よりも判断能力がある状態ということになります。

まず異なるのは,申立てにあたって,本人以外からの申立ての場合には,本人の同意が必要になる点です。そのため,本件でもYの同意が必要になります。

また,保佐の場合には,法律上当然に保佐人に付与される権限が具体的に規定されています(一定の重要な法律行為についての同意権,同意がない場合の取消権)。ところが,補助の場合には,そのような規定がないため,審判の申し立てに際し,同意権を付与する行為,代理権を付与する行為について,具体的に請求をしなければなりません。なお,同意権を付与する行為については,法律に規定されている特定の法律行為に限定されますが,代理権を付与する行為についてはそのような制限はありません。

そのため,本件では,単に補助開始の審判を申し立てるだけではなく,「不動産その他重要な財産の取引について,補助人に同意権を与えてください」と請求しなければなりません。もちろん,その他の法律行為に同意権付与の請求をすることも出来ますし,代理権の付与を請求することもできます。

その結果,裁判所がⅩに対し,上記行為についての同意権を付与した場合には,仮にYがⅩの同意なく投資用不動産を購入した場合には,取消権を行使することができます。

以上のように,補助の場合,保佐以上に本人の自己決定権を尊重します。

これは,補助の制度がターゲットにしているのが,ほとんど判断能力については問題がないが,取引の複雑さ等によって援助が必要になる者であり,補助制度が旧法下では行為能力については問題ないとされていた者をあえて積極的に支援・保護しようという趣旨に基づいていることに理由があります。

そのため,保佐が開始した場合には,取締役という立場を喪失したり,いくつかの専門的な職業の資格を喪失する等,欠格条項の対象になるのに対して,補助の場合には欠格条項の対象にはなりません。

以上

 

2014年5月19日 8:59 - カテゴリー: 法律のお話し

法律相談のお話⑪【意思表示の合致による契約の成立】

1 意思表示の合致による契約の成立

Q 教育セット等の販売会社が,商品を販売する際に,商品の種類・個数・代金等が書かれていない契約書に買主が署名押印をし,その後会社側で商品の種類・個数・代金等の事項を記入して売買契約書を作成して売買代金を請求したところ,買主は同商品を購入したつもりはなく,同商品の売買契約は成立していないなどと述べて支払いに応じないが,同社は支払いを受けることができるでしょうか。

A できません。契約の成立要件として申込みの意思表示と承諾の意思表示の合致が必要であるところ,本件では商品の種類・個数・代金等を特定した売買契約の申込みの意思表示が存在せず,買主と同社との間で目的物と代金を特定した売買契約の申込みの意思表示を行ったと認められる特段の事情が存在しない限り,契約の成立要件を欠き,売買契約は成立しないからです。

2014年5月12日 9:17 - カテゴリー: 法律のお話し

桜も咲きました。

 


                                5月8日の少し曇った札幌の空です

                            5月8日のすっきり晴れた中標津の空です

2014年5月8日 10:27 - カテゴリー: お知らせ
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