アーカイブ(2014年2月)

法律のお話し⑥【心裡留保】

心裡留保
Q 自動車販売会社と提携している信販会社が,自動車を購入したAとの間でクレジット契約書を取り交わした。後日Aに電話で同契約の確認をしたところ,Aは同契約について認めるような回答を述べた。しかし,後日,クレジット契約についてはAの友人BがAの名義を冒用して締結していたこと,及びAはBに車の名義人になることは頼まれていたがクレジット契約の借主になるつもりはなかったことが判明した。
信販会社はクレジット契約に基づきAに対し借入金の支払いを請求したが,Aはクレジット契約をしたつもりはなくクレジット契約は無効であると主張して支払いに応じないが信販会社は支払いを受けることができるか。

A できない可能性がある。
Aはクレジット契約の借主となる意思はなかったと述べるが,後日信販会社から契約締結意思の確認を受けてAはその意思がある旨の回答をしていることからすると,この段階でAのクレジット会社に対するクレジット契約締結の申込みがあったものと考えることができ,そうであるなら同契約は成立したと認められる可能性がある。
もっとも,同契約が成立していたとしても,Aには同契約の借主になる意思はなかったのであり,Aは真意でないことを知りながら同契約締結の申込みをしたことになるため,当該意思表示は心裡留保(民法93条)に該当する可能性がある。
心裡留保に該当すると認められた場合,相手方である信販会社が真意でないことを知り,又は知ることができた場合には,民法93条但書により同契約が無効となる可能性がある。
                                                       以上

2014年2月25日 14:04 - カテゴリー: 法律のお話し

法律のお話し⑤【任意後見制度について】

法律のお話し⑤【任意後見制度について】

■ X(60歳)は,現在自己所有の家に一人で住んでいます。特に認知症になっているわけではなく,判断能力に問題はありませんが,少し物忘れが気になってきており,足腰も弱ってきていることから,将来判断能力が不十分になった際は,自宅を売却して,そのお金を利用して老人ホーム等で面倒を見てもらいながら生きていきたいという希望を持っています。
このようなXのために,何かできることはないでしょうか。

■ 任意後見制度の利用を検討すべきです。
 簡単な内容は,前回の「成年後見制度の概要」に記載してあるとおりです。
 本件では,将来Xの判断能力が不十分になった場合には,現在住んでいる不動産を売却し,そのお金を使って老人ホーム等で生活をする,という内容を,予め契約をしておくことになります(任意後見契約,といいます。)。
具体的な流れを説明しますと,
①まず,具体的な契約内容を,公証役場にて任意後見契約の公正証書を作成します(登記もされます。)。
②その後,本人の判断能力が不十分になった段階で,本人や配偶者,4新親等内の親族又は任意後見契約受任者(本人と契約をした者です。)が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。
③任意後見監督人が選任された段階で,任意後見契約の効力が生じ,任意後見受任者が任意後見人となり,任意後見監督人の監督の下,本人と契約をした内容で,後見事務を行うことになります。
なお,任意後見監督人は,任意後見人の事務を監督し,家庭裁判所に定期的に報告をすることになります。

本件では,「Xの自宅を売却して,そのお金を利用して老人ホームで生活をする」などというのが任意後見契約の内容になりますので,任意後見人は,その契約内容に従って,実際にXの自宅を売却して,そのお金をつかって,Xを老人ホームに入所させることになります。こうして,Xの当初の希望が実現することになります。

以上

2014年2月19日 17:46 - カテゴリー: 法律のお話し

法律のお話し④【取締役と会社との取引】

■(事例)
会社が,取締役から取締役所有のビルを譲り受けたが,その際,会社が時価よりもかなり高額な価格でそのビルを買い受けていた場合の問題点について

■(本文)
このような取引は,利益相反取引に該当することになります(会356条1項2号3号)。
利益相反取引には,取締役が会社から財産を譲り受けたり,金銭を借りたりする場合などの直接取引(会356条1項2号)や会社が取締役の債務を保証する場合などの間接取引(会35条1項3号)があります。
このような利益相反取引については,取締役が会社の利益を犠牲にして取締役自身の利益を図るおそれがあるため,株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)の承認が必要とされています(会356条1項2号3号,365条)。

株主総会(取締役会)の承認がある場合,当該利益相反取引は有効となります。もっとも,会社に損害が発生している場合,取締役は,任務懈怠責任として損害賠償責任を負うことになります(会423条1項,3項)。
株主総会(取締役会)の承認がない場合,当該利益相反取引は,原則として無効となります(会社は,利益相反取引をした取締役に対しては当然に無効を主張できますが,第三者に無効を主張するには,当該取引が利益相反取引にあたり,株主総会(取締役会)の承認がなかったことについて,第三者が悪意であったことを立証する必要があります)。
そして,会社に損害が発生している場合,取締役は,任務懈怠責任として損害賠償責任を負うことになります(会423条1項,3項)。

以上から,事例のケースでは,
ビルの売買の効力については,株主総会(取締役会)の承認があれば有効,承認がなければ原則として無効となります。
そして,会社に損害が発生している場合,取締役は,損害賠償責任を負担することになります。

                                                  以上

2014年2月13日 9:42 - カテゴリー: 法律のお話し

雪まつりが始まりました。

2014年2月6日 16:06 - カテゴリー: お知らせ
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