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法律相談のお話⑫【補助制度について】
【補助制度について】
■仮に,前回の「保佐制度について」のYの場合に,医師に診断書を記載してもらった際に「補助相当」とされたため,Ⅹが補助開始の審判を申し立てたとします。そして,その結果補助開始の審判が出て,補助人としてⅩが選任された場合,保佐の場合とどのように異なるでしょうか。
■補助は,精神上の障害により事理弁識能力が不十分な場合に認められる,法定後見制度です。保佐の場合には,「著しく」不十分である必要があり,補助は保佐よりも判断能力がある状態ということになります。
まず異なるのは,申立てにあたって,本人以外からの申立ての場合には,本人の同意が必要になる点です。そのため,本件でもYの同意が必要になります。
また,保佐の場合には,法律上当然に保佐人に付与される権限が具体的に規定されています(一定の重要な法律行為についての同意権,同意がない場合の取消権)。ところが,補助の場合には,そのような規定がないため,審判の申し立てに際し,同意権を付与する行為,代理権を付与する行為について,具体的に請求をしなければなりません。なお,同意権を付与する行為については,法律に規定されている特定の法律行為に限定されますが,代理権を付与する行為についてはそのような制限はありません。
そのため,本件では,単に補助開始の審判を申し立てるだけではなく,「不動産その他重要な財産の取引について,補助人に同意権を与えてください」と請求しなければなりません。もちろん,その他の法律行為に同意権付与の請求をすることも出来ますし,代理権の付与を請求することもできます。
その結果,裁判所がⅩに対し,上記行為についての同意権を付与した場合には,仮にYがⅩの同意なく投資用不動産を購入した場合には,取消権を行使することができます。
以上のように,補助の場合,保佐以上に本人の自己決定権を尊重します。
これは,補助の制度がターゲットにしているのが,ほとんど判断能力については問題がないが,取引の複雑さ等によって援助が必要になる者であり,補助制度が旧法下では行為能力については問題ないとされていた者をあえて積極的に支援・保護しようという趣旨に基づいていることに理由があります。
そのため,保佐が開始した場合には,取締役という立場を喪失したり,いくつかの専門的な職業の資格を喪失する等,欠格条項の対象になるのに対して,補助の場合には欠格条項の対象にはなりません。
以上